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よみびと

私が好きな本・映画・音楽・ガジェットを紹介していきます。

『世界は感情で動く : 行動経済学からみる脳のトラップ』  マッテオ・モッテルリーニ (著), 泉 典子 (翻訳)  あらすじ、解説、感想

本書を通して著者が伝えたい事

    人間は自分で判断しているように思えるが、実は環境に影響されて決断をしている。特に、ヒトの購買行動は合理的な理由を基に行われず、ほとんどの場合感情によって行われる。

本書をおすすめしたい人

  • 商品の販売をしている営業の担当者、マーケティングの仕事をしている人
  • 「甘い文句につられてついつい物を買ってしまう」という人

本書で使われる用語の解説

本書で掲載されている39の学説のうち、5個ほど私なりの解釈を踏まえて解説する。

 

1.予言の自己成就

  • 根拠がない噂や思い込みでも、人がその言葉を信じて行動すると、結果としてその言葉通りの現実が作られる現象。

この現象を理解するためには、20世紀に流行した「ノストラダムスの大予言」といった事例をあげることができる。

フランスの医師で占星術師であったノストラダムスは、「1999年7月に人類が滅亡してしまう」といった予言を遺した。

21世紀になってしまった今振り返ってみたら、「そんなウソを信じる人がいるのか?」というほど根拠もない予言ではある。

そういった意味では、「実際には起こらなかった」と言えるかもしれないが、当時はTVニュースでも取り上げられるほど世界中の人々を不安に陥れた予言であったため、予言が人々の心理に強い影響を与えるという事実は無視できないといえる。

 

2.ピークエンドの法則

  • ある出来事が起こった時、その出来事の印象を決めるのは「ピーク」と「エンド」の情報であることを示す法則

この法則を理解するために、私のフランスでの留学経験をあげたい。

2013年秋にフランス・ストラスブールに留学したのだが、留学当初はフランス語がまったくできず、授業中も常に頭を抱えていて「早く帰りたい」と思っていた。

しかし、留学中にしたベルギー・ポーランドを回る一人旅をしたときに、留学していたストラスブールがいかに住みやすい街かを実感した。

そのあとはストラスブールで出会う人々と仲良くなって一緒に旅行をしたり、12月に世界的に有名なクリスマスマーケットがストラスブールで開催されたことによって、楽しい思い出を作ることができた。

留学の最後には、3年経った今でもつながっている親友ともいえる人との関係を築くことができたし、苦手だったフランス語も得意になった。

3年経って、このように振り返ってみても、私の留学経験は「ピーク」と「エンド」の思い出が強く思い出される。

したがって、この法則も納得できる。

 

3.コンコルドの誤謬

  • ある物事に対しての金銭的・精神的・時間的投資を行う事が、将来的に見返り・利益を生まないことを知っていても、それまでの投資が無駄になることを惜しんで投資をやめられない現象のこと。

これは、ギャンブル、転職、浪人しての受験勉強などに言える事ですね。

数日前にテレビで「お金持ちはつまらない映画を最後まで見ない」という説を目にしました。

この説の前提として、お金を持っている人=投資がうまい人といえるのですが、

映画館に行って自分の観ている映画がつまらないと感じたら、すぐにその場から立ち去り、もっと価値的なことに時間を使うと言う事です。

彼らは、映画に払う1800円よりもつまらない映画を見て無駄に過ごす2時間の方が価値があると思っているのですね。

お金はいつでも回収できますが、時間は絶対返ってきませんからね。

 

4.フレーミングの法則

  • 物事は見る角度・判断する角度を変えることで印象が変わってしまう事

この法則を理解するために、以下の二つの文章を読んでみてください。

  1. Aの宝くじは、80パーセントの確率で当たります。
  2. Bの宝くじは、20パーセントの確率で外れます。

この2つの文章を宝くじで売り場で目にしたとき、どちらのくじを買いますでしょうか?

確率をそこまで理解していない人は、おそらく1.のくじの方があたりやすいと思ってしまうようです。

5.基準値の誤り

  • ある出来事が発生する頻度は、「基準値」がある。しかし、個別の出来事やそれに起因する感情によって、基準値を軽視して物事の判断を下してしまうこと。

この説を理解するためには、現在世界的に話題になっているイスラム国(IS)が与えた「イスラム教徒」に対する悪いイメージが挙げられる。

ニュースを見ていても、ISが行ったテロ行為によって、一般の人々のイスラム教徒に対する印象はかなり悪くなってしまった。

個人的な経験に基づく観察になるが、ロサンゼルス空港で税関にパスポートを見せて、中東から来た人たち、または「アラブ人っぽい顔をした人たち」は別室に通されるのを、目撃したことがある。テロリストではないか?と疑われているためだ。

しかし、アメリカのCIAが行った報告によると、2015年時点で、ISには3万人の人がいると言われてる。しかし、世界中にいるイスラム教徒は1.7億人。

割合に直してみると、全体の0.017%しかISに所属している人はいないことになる。

こうした全体に対する割合という「基準値」があるにも関わらず「テロで被害に遭った」という経験から、イスラム教徒に対する差別が行われているのだ。

 

『世界は感情で動く : 行動経済学からみる脳のトラップ』の感想

人が「なぜ経済活動・購買活動」を行うのかを体系的に理解できる一冊である。

この記事では5個の説や法則しか解説しなかったが、本書は39もの法則を掲載している。

5個だけでもこのボリュームであるので、39の法則を読了するのは大変骨の折れる作業ではあったが、

行動経済学で扱われる学説を体系として理解するにはいい本だと思う。

この本から行動経済学に興味を持って、さらに研究を進めていく入門書としても扱えるかもしれない。

 

これから起業してビジネスをやるにはうってつけな本。

ビジネスでは「どうしたら人に興味を持ってもらい、共感され、信頼されるのか」を気にかけなければいけない。

起業すると、どうしてもサービスを売る側の目線になってしまうが、買い手の気持ちを理解するにはいい本であると思う。

なかなか顧客がつかずに営業成績に悩む営業マンも読んでみるといいかもしれない。

 

本書の弱点:どうしたらいいのか?は書いていない

この本は、あくまで「学説を一般人にも理解できるようにした入門書」である。

ビジネス書・自己啓発書に分類されるが、そういった本にほとんどの場合に含まれている「何をどう実践したらいいか」というアクションステップは書いていない。

したがって、「行動を起こすためにビジネス書にある本書を手に取ってしまった人」にとっては「じゃあ、どうしたらいいの?」といった疑問に答える解決策は提示していないので注意が必要だ。

 

しかし、私からすると「答えを提示する本」なんてつまらないと思う。

むしろ、このように法則や定理などをわかりやすく解説してくれて、

後は読者が実際の現象に当てはめて定理・法則の有効性考える方が後々役に立つと思う。

 

もしあなたがこの本を手に取ったのなら、

思考停止にならず、さらに考えて行動できるような人になってほしい。

 

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